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スキーインストラクター今昔物語
財団法人 神奈川県スキー連盟 教育本部専門委員 東海林延友 
 10年前、たしか講習会では講習生の表情を見ながら、楽しく滑っているのか、練習が難しいのかなどの様子を探りつつ、雪上でのコミュニケーションを図っていたと記憶する。が、しかし10年後の1999年のシーズンはいささか、その様子が異なってきた。
 講師が講習生の足下を見るようになったのである。講習に際してはもちろん表情、またはアイコンタクトなども依然重要なファクターではあるが、講習生の足下、それもスキーが気になっているのだ。別に、「おっ、今年のデザインはシンプルになったなあ・・・」などとデザインやカラーのことを気にしているわけではなく、形なのである。
 形、すなわち「シェイプ」なのである。シェイプ(Shape)とは研究社現代英和辞典によると、「形、形状、かっこう」などの意味があり、例えばWhat shape is it?(どんな形をしているのですか?)などのように使われる。他にも様々な意味を持つがここではこの意味が適当と思われる。
 数年前までは私たちが使っているスキーは、誰のスキーも殆ど同じ形状を持っており、ジャンプ用、クロスカントリー用、テレマーク用などが長さ、幅などが違って存在していた。しかし、最近彗星のごとくスキー産業界(ここではあえて産業界と言わせてもらいます)に登場したのは、前出のスキー形状の基準で、滑走性能に対して、多大な影響を及ぼす「サイド・カーヴ」がこれまでのものとは大きく異なる、日本ではカービング・スキーと言われるスキーである。諸外国ではシェイプド・スキーと言われている。
 アメリカ職業スキー教師協会(PSIA)では6年ほど前から既にこの、時代の新たな立て役者となるべくスキーを、研究課題として取り上げ、全国のインストラクターの、日本で言う中央研修会のような場において、公式に各インストラクターにこのようなスキーが増えてくると思われるので、自ら試し、講習の際の利用法などを研究するように通達している。この組織は数年前には、“スキーインストラクター”に対し、スノーボードの研究も提案している。
 実際に10年前の講習会では、講習生の滑りそのものを中心に、アドバイスを考え、リトライしながら楽しく滑っていれば良かったのであるが、西暦2000年を迎えようとしているこのシーズンは道具、それも明らかに滑りの差が出てくる「カービング・スキー」という相手も見ながら、気にしながら講習をしていかなければならなくなってきた。
 カービング・スキーはこの10年のスキー界で、最大かつ華やかなデビューを飾った出来事だと感じる。滑るテクニックをちゅうしんに、スキーテクニックの変遷もいろいろと行われてきたが、今度は真に道具によってスキーテクニックの変化を余儀なくされているのである。インストラクターは、クラシック・スタイル(アメリカでは既にこう呼ばれたりもしている)のスキーとカービング・スキー、両方のテクニックを身につけ、そのメリット、デメリットを理解し講習をしていかなければならない時代を迎えた。
 次に、ウィンター・スポーツ界に、スキー以外で、それもカービング・スキー以上に華やかに派手に、もの凄い勢いであふれてきたカテゴリーが、「スノーボード」である。
 スノーボードは10年以上前から存在はするが、広くウィンタースポーツ産業界に登場してきたのは、5,6年前である。しかし、その登場から普及までのスピードの速さ、凄さといったら、スキーが何十年とかけてきた道のりを、わずか数年で達成した感がある。

 登場してから間もないスノーボードであるが、既にウィンター・スポーツの一つとして、広く世の中に認知されている。特に若い人達、女性に人気が高く、ファッションを中心に育っているスポーツである。10年前のスキーインストラクターは、スキーのみを勉強し、講習生に楽しい時間を過ごしてもらえば良かったのであるが、今後の講習シーンは、今日はスキー、明日はスノーボード、といった2種類の楽しみを求められる講習風景が登場してくるだろう。もしくはスキー専門インストラクター、スノーボード専門インストラクターのように、完全に分化してインストラクションが行われていくのか、それとも両方をこなし、かつクロスカントリースキーなどの自然相手のアウトドア的スキーを講習できるマルチ・インストラクター、たぶん呼称も変わり「ウィンタースポーツ・インストラクター」とでもなるのであろうか、神奈川県スキー連盟が、あと10年後の70周年を迎える年が今からとても楽しみである。

東海林延友(藤沢スキー協会アインシュタイン)


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