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◆菊地競技本部長 詳細内容


■ 菊地競技本部長「スキー競技知識と見方」

 競技本部と言いますと、どちらかと言いますと喋ることよりも手作業が多くて、こういう席で長々とお話するのはなれていませんので、よろしくお願いいたします。本日は2点ほどお話したいとおもいます。1つは、競技スキーと基礎スキーの違い、もう1つは競技スキーのルールです。

◆競技スキーと基礎スキーの違い

 これは、どちらかを否定するといった内容ではありません。基礎スキーは日本スキー教程があり、ポジションやスキーヤーの体の動きなどこまかく書かれています。ところが競技の世界では、FISのルール、全日本の競技規則という本がありますが、統一されたテクニックはありません。選手は与えられたポールのなかで、どんな(格好でも良いから、人よりも1/100秒でも早ければいいわけです。そういう世界です。しかし、選手を含めて競技を運営する権利と義務と任務ということでルールが定められています。競技の世界ではコーチが存在しますが、教程のようなものはありませんので、自分のメソッドだけで指導することができます。自分が教えた選手が、強くなってトップになればコーチとして評価される形になります。ただ、競技の世界でもどんな形でも良いのかと言えば、基本的なテクニックは一緒だと思います。

◆トンバはトンバの個性

 どこで、世界最速のテクニックが生まれるのか? マテリアルの変化が大きい。それにより技術も新化してきました。数年前、世界のトップにいたトンバですが、当時世界最速でした。天から授かったセンス、さらなる努力をし、彼の考え、体力、すべての要素が重なってトンバの滑りが完成されたわけです。彼が世界のトップに何年かいることで、彼の滑りが見とめられるわけです。しかし、トンバが幾ら上手くても、それは彼の個性であって、絶対真似することの出来ないテクニックなのです。トンバの滑りを真似して滑ろうとする選手を見ますが、それはうわべだけのことであって、条件次第で対応能力の無い自分の姿に戻ってしまうのです。

◆良いところを誉めて伸ばす

 わたしは、子供達に教える機会が多いのですが、どこに教えるときに注意するかと言いますと、丸い選手もいれば、4画の選手もいます。では全員を三角にするのか、ということではなく、丸は丸で伸ばし、4画は4画で伸ばせば良いと思います。人間というのは誰でもひとつは必ず良いところを持っております。話は違いますが、在任でさえ、良いところはあるといいます。スキーヤーもいくらへたな子供でもひとつはかならず良いところがあります。回すのが下手だけど、スピード感覚だけはずば抜けているなど、良いところを伸ばしてやることが大切です。コーチでも、だいたい悪いところを指摘したがるのです。フリー滑降でもポールでも、1本目と2本目では違う指摘をしてあげる、良いところをどんどん誉めて伸ばしてあげれば良いと思います。悪いところを治すより、良いところを誉めることで、悪いところも直ってくる可能性があります。これは私の指導理論ですが、皆さんも資格を取られたら、自分のメソッドで自信を持って指導し行かれるのが良いと思います。

◆地域差や指導員の差が大きい

 競技のコーチはどのような人がなれるのかというと、誰でもなれます。ただ、選手からそれだけの信頼を持ってもらえるかだけです。みなさんの準指導員・指導員受検では、理論講習会2回に雪上の講習会もあって、検定会と、本当に多くの時間を仕事や家庭のなかで作って、いろんな知識を身につけて資格を取らなければ行けません。たとえば、教程にしろ、指導員の資格制度にしろ、競技の世界よりも、はるかに基礎スキーの世界のほうが確立されているんじゃないかと思います。特に、競技の世界では指導要項はまったくなく、たとえばスキージャーナル誌などでも、トンバの滑りを3人の人が解説しているのですが、3人が3人違った内容になるのです。本来は、同じ解説をしなければいけないと思います。また、北海道や新潟といった地域によって指導者によって、指導する内容がまったく違ってくることがあります。そこに日本の競技の底上げがならない原因だと思っています。スイスやオーストリアに行きますと、競技の世界でも教程のようなマニュアルがあります。どこの地域でも一貫した指導が受けられるのです。そういう意味では、競技の世界でも指導員制度や教程が確立されていけばと考えております。

◆競技スキーのルール

 すべてのルールは、いたずらに決まったわけでもなく、選手に制約をあたえたりするものでもありません。大会をスムーズに運営し、公平に行われるために設けられました。大切なのは、選手の安全と、全ての問題から保護するために作られています。選手、競技確認、主催者、開催者については、これは覚えておいていただきたいのですが、特に、権利と義務と任務が与えれています。特に、開催者の権利、義務、任務と選手の権利と義務があります。

 ◆選手の権利と義務

 選手は、ルールを熟知しなければいけないという義務があります。たとえばスラロームおわって、主審が何旗門失格と張り出します。それを見たら15分以内であれば、一万円を添えて抗議として提出すれば生きるケースもあります。また、当たり前のことですが、大会のあらゆる関係者に対して、礼儀正しく且つスポーツマンらしく振舞わなければいけません。日頃日常生活の中でちゃんとした行動ができない選手は、消して強くならないし一流選手にはならないと考えています。

◆大会の開催する側の権利と義務と任務

 これは覚えておいていただきたいのですが、ジュリ−メンバーは3名から4名で構成されます。(TD,競技委員長、主審、副審(スピード系))誰が任命するのか、全日本選手権で考えますと、TDはSAJが任命します。主審、副審はTDが任命します。競技委員長はあらゆる条件を熟知しているということから、大会の開催される地元から選びます。特に、TDは最高責任者で重要な役割であります。選手から見れば、TDや主審、副審が誰であってもまったく関係がありません。なにが影響を及ぼすかと言うと、コースセッターなのです。

 ぜひ、覚えておいていただきたいのですが、選手が大会で良い成績を残すために戦わなければならないものは、1つは自然条件です。コースのうねりとか地形、雪質、天候などです。もう1つは、自分自身との戦い。最後に、セッターの立てたポールをいかに攻略するのかということになります。セッターに対しても50条ぐらいのルールがあります。特に、覚えておいてもらいたいのは、スラローム、オープンゲートの幅が4〜6m、バーチカルは4〜8m。選手は高速で入ってきますので、バーチカルは長めにとってあります。もうひとつはヘアピンで、インポールとインポールのミニマムが0.75m、さらにバーチカルフラッシュ(私が検定員ならストレートフラッシュと書いても×にはしません)です。次にGSLです。GSLはオープンゲートとバーチカルしかありません。オープンは4〜8m、バーチカルも4〜8mです。この数字だけはしっかりと覚えてください。

 私もいくつかの資格を持っております。技術代表の資格を取るときは大変な思いをしてとりました。ただ、今思うことは、資格は取った後が大変だと思います。資格を取った以上は、まわりもそういう目でみますし、最近の情報化では、ややもすれば選手のほうが知識を持っている、高いレベルにいるということもあります。指導員をとられて、その後も、今まで以上の勉強を続けていただけるとよろしいかと思います。

 最後になりましたが、先日オーストリアの事故で、特に福島の中学生がなくなりましたが、神奈川県でも国体をめざす選手が20人ぐらいいます。温暖化の影響もあって、スキーシーズンが短くなってきたいます。12月に入れば大会も始まってしまい、それを追っかけているうちに気がつくとシーズンが終わってしまいます。ではどこでトレーニングするのかといえは、夏の間海外ということになります。そこまでしなければ、世界に出て行くことは難しいと考えています。われわれもひとつの教訓として、いろんな意味で、教えるだけでなく、全てに対して対応できる能力を十分身につけていただきたいと思います。


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