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五竜T行事
指導員研修会(D)・公認検定員クリニック(D)
・基礎スキー技術強化合宿(B)
基礎スキー指導員養成講習会(B)
技術レベルアップ講習会(A)
スキーパトロール養成講習会(A)
HC(ハンディキャップ)スキー教室(1/18〜19)
大井智子 広報委員レポート

ゴンドラの中で1枚…

ゴンドラの中で2枚…

◆「基礎スキー指導員養成講習会」
 10時5分。すでにエスカルプラザの前には,班ごとのかたまりができている。「正指導員受験班1班」にねらいを定め,渡辺教育部本部長の横に移動した。初日の班員は12人。男性ばかりだ。渡辺さんは班長さんを決め,「全山巡りましょう」との合言葉で,さっそくクワッドリフトに乗り込んだ。ゲレンデには雪がちらちら降ってきた。山の上の方はけむっている。少々の不安を胸に,クワッドリフトの下り場からゴンドラリフト乗り場を目指す。
 6人乗りのゴンドラの中で,同乗する一般の人たちに「すいません。ちょっと撮影します」と一声かけて,この日のために池袋のビックカメラで購入したばかりのリコーのデジカメで,渡辺さんと班員の人たちをしっかり撮影した。
 渡辺さんによれば,今年のSAKの正指導員受験者は59人。五竜での班員の年齢構成は30代と40代が中心だが,60代の人も受験するという。うち30人あまりは北海道の朝里スキー場で受験する。同乗した人たちはみな朝里へ行くそうだ。去年12月の北海道研修を担当した旅行代理店「シティフェイス」がツアーを組み,なんでも前年まで受験していた常連さんが,ツアーコンダクターのように付き添ってくれるらしい。

講習が始まる

天気がよさそうに見えますが…

◆なんとなくいやな予感がしたので‥
 ゴンドラを降りて「アルプス平駅」に着くと,激しい風で視界が悪い。人影もない。かろうじて動いているアルプス第一ペアリフトに乗って,山のてっぺんへ。空中を舞う雪は,まるで砂嵐だ。標高1676mの頂上には,やっぱりだれもいない。ほかのリフトは止っている。なんとなくいやな予感がしたので,渡辺さんに「すみません。ゆっくり行くので班員の方とどんどん先を滑ってください」とお願いした。雪嵐の中に13人のスキーヤーが消えていく。
わたしも続いてと滑り出したとたん,雪だまりに板を引っかけて,あっという間に今年最大の大転倒をした。予感的中。新品の板が修理中のため,急きょ持参した古い板と新しい靴の調整がいまひとつだったのか。両板はふっとび,ストックもどこかに消えた。かけていたはずのサングラスも所在不明だ。雪嵐の中,目をこらして,なんとか板とストックの散らばった場所を上部に確認。だれかいれば拾ってもらえるのに,ゲレンデには人気がない。遭難したような気分で,とぼとぼと,板やストックを広い集めた。サングラスだけは,どうしても見つからない。あきらめてその場を立ち去った。
渡辺班に追いつくと,「ずらしの小回り」「切れのカービング」「内足を意識したターン」などを講習している。そのままとおみゲレンデからいいもりゲレンデへ移動。なぜか天気は回復した。わたしは,自分のへたくそぶりにひそかにしょげながら,「宿にゴーグル取りに戻ろうかな」と思いつつ,しばらく裸眼でがんばっていた。ふと下を見ると,ウエアのえりになくしたと思ったサングラスがひっかかっているのを発見! ああ,よかった。

養成講習会参加者、頑張れ

田村専門委員の班

◆「基礎スキー準指導員養成講習会」
 ほかの班も撮影しようと思い,いいもりゲレンデを見渡すと,両足をしっかり開き,わかりやすい演技で滑り降りてくる専門委員の姿を見つけた。同室の,田村専門委員だ。滑っているシルエットは,大きな人に見える。さささと近寄よると,そこは「準指導員受験班1班」。40代から50代の受験生の人々だ。班員の人とペアリフトに同乗して,「なぜ準指受験をされるのですか?」と聞いてみた。
 「周りの人に『いい歳して,準指なんて』と言われますが,55歳でがんばってます。20歳から30代半ばまでスキーをしてましたが,滑る仲間がいなくなって10年スキーをやめていました。8年前に再開し,川崎のクラブを紹介してもらい楽しくスキーをしています」という男性だ。今回の五竜行事にはクラブから6人で参加した。「年齢的には息子や娘のような若い子たちに,宿の手配などいろいろサポートしてもらい,すごく助けられています。試験に受かったら彼らの重荷にならないようにしたい。中高年の人たちがスキーを楽しむ手助けができればいいなと考えています」。そうしたことをさらっと言えるのはすごい。きっといい先生になるに違いない。
 準指受験は2度目という40代女性の話も聞いた。田村さんについて,「ていねいに教えてくれます。うまい人はさらっと流して,ヘタな人にはゆっくり話して。中ターンやショートターンをやりながら,一貫して『脚の動きを止めないように』と注意されました」。
彼女が準指を受験した理由は,「学校勤務なのですが,子どもたちとスキーに行って『スキー得意なら教えてよ』と言われたので。1級取って10年経ちます。競技の草レースに出てたので,去年の準指受験ではずらしがぜんぜんできなかった。受験では,滑りの幅が広がりました。クラブの人もいろいろなことを教えてくれます。『この滑りではどこを見ればいいのか』がわかり,すごく勉強になります」。
 ところで,田村さんの班にひとりヘルメットをかぶっている受験生がいる。「どうしてヘルメットを?」とたずねると,「僕の10歳の子どもにもかぶらせてるので,自分がまずかぶんなきゃあと。あったかくていいですよ。クラブでは,『黒ヘルの○○』って呼ばれてます。トレードマークなので,ぬぐとみんなが怒るんですよ」と照れながら教えてくれた。

佐藤専門委員のレベルアップ班

取材ありがとう

◆「技術レベルアップ講習会」
 続いて,竹腰専門委員の「準指導員受験班3班」を撮影。「ポジションを中心に話をしてくれる。細かくていねいに教えてくれるので,『ああそうなんだ』と思える。コブ斜面でも,ポールでも『目線は先を見てうまくコースを取るように』と教わった」と30代の男性。
 この日はいいもりゲレンデのレーシングバーンに,20旗門ほどのGSLが準指養成班の協力を得てセットされていた。入れ替わり立ち代り各班が,ポールをくぐる。スタート地点でカメラを構えていると,班員わずか2人というこじんまりとした「技術レベルアップ班」に遭遇した。講師は佐藤長生専門委員。生徒はそれぞれ1級,2級の有資格者だ。二人とも20代〜30代の好青年である。今日の残りの時間は,ここと行動をともにすることに決定。
さっそくクワッドリフトで,2級保持者の受講生に「どうですか」と聞いた。「去年も参加しました。その時も4人と少人数でポイントを的確に指摘してもらえました。専門委員の人に教えてもらえることなんてめったにないので。級はもってなかったのですが,去年いきなり車山で2級に合格しました。今回はクラブの人と4人で来てます。こんな(急な)斜面で小回りするのも,ポールもくぐるのも初めてです」と話すわりに,とても上手に斜面を降りてきた。
佐藤さんは,「急斜面でまずゆっくり小回りをして,慣れてきたらスピードを出す」と話しながら指導している。斜面が緩くなると,内足のエッジを使ったエッジの切り換え方を教えた。2人とも,とても素直にそれに答えている。
1級保持者の受講生は,「どこのクラブにも無所属せず,ひとりで参加しました。以前,所属していたクラブではスキーは指導してもらえませんでしたが,代わりに今回のようなSAK行事を案内してくれました。1級は,なじみのブランシュ高山で取得しました。指導員を目指します。それにはクラブに入らないといけないと聞いたので,どこか探そうと思います」と答えてくれた。
クワッドリフトに同乗しながら,彼らの感想を聞いていた佐藤さんは,「彼らはスキー操作を覚えるのが早いですね。ちょうど準指導員を受験するぐらいになると,スキー技術の伸びがにぶる。種目しか練習しないせいか,足さばきが悪い印象を受けるのです。1級をとる時に,まずはどこでも滑れるようにならなければいけませんね」と苦言を呈す。確かにカービングスキーの登場で,だれもが簡単にスキーを操り,斜面をハイスピードで下りてくるようになった。佐藤さんが指摘するように,「足さばき」はいまひとつ。スキー技術の幅を広げようと思っても,整備の行き届いたいまのゲレンデでは限界もあるのか……。
 すでに3時30分近い。少人数なのですぐに順番が回ってくる。撮影をしながら付いていくだけでハードだが,2人はうれしそうにぴょんぴょんゲレンデを飛び跳ねる。「この一本で終わりかな」と思っていたら,佐藤さんが「なんだか視界がよくなってきましたね。ゴンドラで頂上に行きましょうかね」とファイトにあふれた発言をした。なんてタフな人たちだ! 彼らはゴンドラ乗り場に直行し,わたしはそこでお別れした。

熱心に講習は続く

専門委員研修

◆「夕方のとおみゲレンデ」
 ぼちぼちバーンは,硬くしまってきた。寒い。ほとんどのSAKの講習班は解散したはずだ。ひとりでリフトに乗りながら,もう帰ろうかな……と弱気になったその時に,一列になってゲレンデを疾走する一団が目に飛び込んできた。神奈川だっ。先頭には,岡崎勇専門委員の姿が。受験生では一番若い,「準指導員受験班6班」だ。ストックを前に掲げて,トレーンで小回りしている。すでに時計の針は4時30分を指している。その熱血指導ぶりは,まるで青春ドラマの一こまのようだ。
 急いで追いつくと,ちょうど解散したところだった。最後まで,岡崎さんに熱心に質問していた人をつかまえて,「いままで講習とはすごい班ですね」と問いかけた。彼は20代後半。「午前中ポール設営の手伝いをしたので,遅くまで講習してくれました。岡崎先生には以前にも習いました。たくさん滑らせてくれるし,わかりやすく親切に熱心に教えてくれます。ターンポジションが高いと言われたので,『どれぐらい低くしたらいいのか』と,突っ込んで質問してたところです」。
準指受験は3回目。「徐々に,言われたことが意識できるようになりました。話がつながってきて,すんなりと受け入れられる。うまくなってきてるのかな」とつぶやき,「講習班は10人以上のことが多いですが,5人や6人にしてほしい。車山研修では,研修会でリフトの割引券が販売されますが,五竜は宿ごとに割引券が違うみたいでした。五竜研修でも一括して割引券を販売してくれるといいのですが」と注文した。
さすがにもう,すべての講習班は解散したようだ。とおみゲレンデの中腹では,黄色いSAK役員のユニフォームを着用した一団がせっせと「講師研修」に励んでいる。柳橋泰久専門委員のもとで,シュテムターンなど緩斜面種目の「目合わせ」をしているようだ。あたりはすでに暗い。じゃましないようにそっと近づいて,熱心な残業ぶりをデジカメに収めた。そろそろ「ウルル」に帰ってあったかいおふろに入ろう。

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