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教育本部 拡大教育本部会議
大井智子 広報委員レポート
「拡大教育本部会」とは

◆10月5日(土)15時。
 神奈川県社会福祉会館の一室で「拡大教育本部会」がスタートした。
直前までの2時間,同じ場所で「第65回理事会」が行われていた。多くの役員がそのままぶっつづけで参加している。書記を務めたわたしはメモの取りすぎでへとへと。ところが理事会でパワー全開だった山田隆専務理事や片忠夫常務理事は,「まだまだいけるぞ」とエネルギッシュな顔を輝かせていた。おそるべし。いったい彼らの原動力はどこで生まれるのか……。

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◆〇〇〇〇部会???
 3日前,広報委員会で上田英之理事に,「理事会のあとで,○○○○部会を取材してね」と頼まれた。その時は,○○○○部会がなにをするところか,実はわかっていなかった。
2部屋の間仕切りを取り払った大きな部屋を見渡して,やっとわかった。集まっているのは,雪上研修会でスキーの指導をしてくれる「専門委員」の人たちだ。その人たちが,これから授業を受ける生徒のように,まじめな顔できちんと並んで座っている。「拡大教育本部会」とは年に2回行われる,専門委員たちのいわば交流会なのだった。

◆「専門委員なら『言葉ではなく,技術を磨け』」
 口火を切ったのは野地澄雄副会長だ。「スキー人口の激減など,スキー界は厳しい状況が続いている。今日の理事会では,『この状況を克服するには,SAK独自にプロジェクトを設け,具体的な第一歩を踏み出さなければ』と議論された。また,スキーの普及には指導者の人間的魅力が欠かせない。一回り大きな指導者の育成を目指してほしい」。
山田専務理事がこれに続いた。「会員にアンケートを取ると『へたな先生はいらない』とはっきり書いてくる。わかってほしいのは,『今の技術がうまいかヘタかはどうでもいい。専門委員になった以上はうまくならないといけない』ということだ」「今回は10人の新人の専門委員がいる。技術に対しては『自分は100%はうまくない。少しでも前に進みたい』とつねに前向きに,謙虚に技術を磨いてほしい。技術を磨かず,言葉だけ磨く人がいる。寒いゲレンデで生徒を説き伏せるのでは,困る。自分でできないことを,言葉だけで教えるのは最悪の指導者だ」。

◆変わらぬ「スタンス」
 「ああなつかしい」と,つい思った。山田専務理事がいまほど偉くなかったころ,北海道の研修会でいつも「おれは,自分でできないことは言わない」と口ぐせのように言っていたっけ。朝里川スキー場では,山田さんに教わったわたしたちの班は,新雪の小山を滑らされた。ふかふかの雪の中で,班員の男性が転んだ。彼の外れた板を探すため,みんなで板をスコップ代わりに新雪を何十分も掘り起こした。板は,永遠に出てこなかった。「真の指導者とは,どんな条件でも滑れないといけないんだ」と,痛感した。
指導員を取ってから受けた北海道の研修会では,指導員受験班を教えていた山田さんとすれ違った時,「へたくそー。ライセンス返せ」とやじられた。へなちょこ滑りを見られたせいだ。ライセンスはついに返さなかったけど。
準指受験会場での,当時普及部長だった山田さんの挨拶は,いつも「うまい人がうかります」。単純で明快な「山田スキー哲学」は,いまも健在なのだ。

◆専門委員は50人に1人
 片常務理事からは次のような話があった。「2年間,一緒に楽しくスキーを滑りたい。現在の山田専務・片常務理事体制で4年経過し,長年課題だった多くの問題を払拭してきた。今期はいろいろな改革を行うので,みんなのキャラクターや体力を借りたい。新人にも期待している。専門委員は,指導員50人に対して1人の割合で選ばれる。50人ぐらいの指導員に影響力を与えられる指導員でなければならない」。
 知らなかった。専門委員は,50人に1人なのか。うちのクラブは指導員が20人ぐらい。専門委員1人分にはまだ足りない……。

◆「年取っても新人には負けません」
 ここで,自己紹介の時間になった。トップバッターは10人の新人。「緊張してます」「スキー界の底辺を広げていくお手伝いをさせてください」と,カタイあいさつが続く。次の,何期目かの専門委員の自己紹介では,「北海道スキーツアーの集客は,専門委員の口コミにかかっています。山田と片をどうぞ男にしてやってください」と,選挙戦のようなセリフも飛び出した。
ベテラン専門委員の番になると,「おや,きみ,やめたんじゃなかったの」という役員からのきつい冗談に,どっと会場が沸いた。ここからは,リラックスだ。ベテラン組の「年取っても若い人には負けません」「体にむち打ってがんばります」などの涙ぐましい決意から,「恥ずかしながら戻ってまいりました」といった「返り咲き組」の言葉も。
先シーズン,ケガしたり,目を回して倒れた専門委員もいたらしい。「1シーズン棒に振り,体を壊すと『いたい目にあう』とつくづく思いました」「『目を回さないように』が今年の目標です」とのあいさつは,みんなの笑いをさそった。

◆「普及部」復活!!
 次は,山田専務理事からの「SAJ報告」だ。
「今期のSAJの新たなテーマはとくにない。ないテーマを,あるように言うのはやめましょう。『カービング,カービングと言うのでなく,スキッディングする昔の板も容認しては』といった意見も出てきた。もともとカービングの板は,プルークやシュテムを経過せずにパラレルができる板として登場した。この板をはいて,プルークやシュテムをやり続けていては1,2級受験者は増えてこない。どうしたらいいかを,みんなで考えていかなければ」。
さらに低迷するスキー界に対して「神奈川が新しく道をつくりたい」と強調し,先の理事会で承認された「緊急提案」として,「もともと『教育本部』は『普及部』と呼ばれていた。これを復活させたい。現在の『教育本部』の下に,有資格者の資格維持など従来の仕事を行う『教育部』と,新会員を開発する『普及部』を新設する。協力メンバーは,意欲さえあれば誰でも入ってもらえるようにしたい。専門委員の中で誰かやりたい人がいたら,執行部に連絡ください」と呼びかけた。

◆「今期は専門委員の数を減らした」
 そして,渡辺三郎教育本部長の話があった。将来,「専門委員になりたい」と思っている人のために,ここはじっくり紹介しておこう。
「今年,県役員と専門委員が改選された。去年の専門委員は73人。このまま増え続けて大所帯になると,『この人どの人?』となりかねない。新人10人が新たに加わったが,辞退した人,過去の参加が少なくて推薦を見送ってもらった人などプラスマイナスもあり,今期は人数を減らそうと67人の専門委員が選ばれた。厳密には,2期目から5期目までの人が『ブロック技術委員』で,新人と6期目以上の人が『専門委員』だが,SAKとしてはとくにこの2つを区別していない。どちらも同じ待遇だ」。
「前年度の反省としては,研修会参加者へのアンケートで『各事業の内容を充実させてほしい』『専門委員の技術のレベルアップを望む』などの声があったこと。今のところ研修会参加者数は減ってない。SAKの準指受験者数は250人と,東京都スキー連盟の600人についで全国2位だ(3位は200人台の北海道スキー連盟)。それに安心していてはいけない。研修会の充実が求められる。みんなが受験生の時,感じたことをやっていけば,おのず

とすべきことは見えてくるはずだ」。

◆「和」をもって,やっていく
 さらに渡辺教育本部長の話は続く。
「教育本部には,『企画委員会』『指導委員会』『検定委員会』『強化委員会』『安全対策委員会』という5つの委員会がある。これを活性化させていく。各委員長,副委員長には積極的に動け,いろいろ提案できる人を選出した」。
「ただスキー場に行って,言われたことだけやるのではなく,これまで以上に滑り込み,練習してほしい。専門委員の言動は常に注目されている。使命のひとつに『次の人を育てていく』こともある。ベテランの人は次の人を育て,うまくバトンタッチしてほしい。60人以上の大所帯なので,和をもってやっていきたい」。

◆「わきあいあい」
 さらに菊地勇二理事から行事説明があり,その後,5つの委員会に分かれての話し合いが時間をかけて行われた。
こうして15時20分,「拡大教育本部会」は閉会した。
最後に,山田専務理事が,「SAJのビデオを見てその通りに教えるのではなく,ビデオは『骨格』として,みんなの技術を取り入れて自分流に教えてほしい。SAKを今のまま維持したい。いろいろな普及関係の委員会を立ち上げるので,ぜひ入ってほしい。新人の人も遠慮しないで手を上げて」と話し,ひと息おいて,「おれすごくこわいと思われてるらしいけど,すごくやさしいからぜひ声かけてください」とそえた。

さて,専門委員の新人たちは,この部会に出席してどう感じたのだろう。
「緊張した。専門委員が何をするのかよくわかった。気合は入った」。
 「山田専務理事やほかの人の冗談を聞いて,それまでの緊張がほぐれた。わきあいあいの雰囲気だった。いっしょうけんめいスキーの腕前を上げようと思った」。
 「これまでは勝手がわからなかった。話をして,みんながわきあいあいで,かたくるしくなくてやりやすいと感じた。スキー業界は厳しい。盛り上げていきたい」。
 「緊張した。準指や正指受験でお世話になった先輩方と肩を並べて仕事をする責任を重く感じる」。
そう話す新人たちの顔は,「きりり」と力強さにかがやいていた。


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