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五竜T行事
上田英之班の体験記 大井智子広報委員

2004年1月16日(金)〜18日(日)

上田英之班はワークショップ形式で
ライターの大井さんを囲んで

◆五竜行事T・上田英之班の体験記
  (指導員研修会・公認検定委員クリニック・エンジョイ8班)
  今回は、広報委員としてではなく研修生として、所属するスキー虫クラブのメンバーと「五竜行事T」に参加した。研修会で講習を受けるのは久しぶりなので、うれしい。受付に行くと、わが「クリニック・エンジョイ8班」の班長さんのところに「上田英之」と書いてあるではないか。いつも、SAKのホームページに配信する記事に、寝る間も惜しんで写真をつけレイアウトしてくれる、情熱的な上田さんだ! 陸上で話すことはあっても、一緒に滑るのは初めてだ。なんだかわくわくしてきた。「せっかくだから体験レポート書こうか」と、五竜T行事の担当広報委員・川上誠さんから、メモ用紙と鉛筆を貸してもらった。

◆「ビデオ研修」
  10時10分。エスカルプラザでの開会式が終わると、指導員研修班とクリニック班はそのまま残り理論研修会に突入した。川上広報委員から託されたビデオで研修風景を撮影しながら、説明を聞く。まず上田理事による、スライドを使ってのQ&A。「スキー技能テスト」という呼称が、「スキーバッジテスト」に変更になったことや、全面変更になった検定制度についての説明が行われた。
  ユニークだったのは、山田専務理事が壇上でいすを使いながらニュートラルポジションなどについて実演してくれたことだ。キーワードは「がんばらない」。「これまでのスキー技術はハウツーものだったが、今回初めて科学的な根拠のもとで解かれている。これまでの内腰の内旋から、外腰の外旋へ。いまのカービングの板は、以前の板のようにふんばったり力をためたりしなくても、ターンできる。40年間培われてきた方法もあるので、必ずこれにしろというつもりはないが、いまの板ならこれぐらいの力のかけ方がベターだということだ」(山田専務理事)。できればあとでもう一度、ビデオで確認したいなあ……と思いつつも理論研修は終了し、よいよ雪上研修が始まった。

この技が効果的ですよ
さて、どの技を披露しようか…

◆「緊張のトップバッター」
  ゲレンデは快晴で最高のコンディションだ。各班とも、とにかく長い距離を滑ってスキーを楽しんでいる。わが上田班もゴンドラに乗り込み頂上へ。そこから「H akuba 47」へ、びゅんびゅん滑り下りていく。私はぴたりと上田さんの後ろについた。 SAJ で、「日本スキー教程」の全面改訂に深くかかわってきた上田さんの生の滑りは、まるくてきれいなシュプールを描いていた。アクロバチックで雑なわたしの滑りとは大ちがいだ。

  ふと、上田さんが立ち止まり、口を開いた。「えー。せっかくですから、ワークショップを行いましょう。今回のクリニックでは、各先生方に技を披露してもらいたいと思います」。えっ。まずい。そんな技は持っていないゾ。と、青くなる私に追い討ちをかけるように、にこにこしながら上田さんが「では、まず大井さん、お願いしますね」と指すではないかっ。「えーっ」と一瞬叫んだが、逃れられようもない。

 課題は、「ターンで内倒し過ぎる生徒を、どのようなバリエーションで矯正してあげるか」だ。すると、頭の中に、10数年前の北海道研修会の朝里川で山田さんが「みんなもっと谷足にしっかりと乗れ。とにかく谷肩をさげろっ」と言いながら、すいすい滑り降りて行くシーンがぽっかり浮かんだ。そこで、「ええっと。では、中ターンを滑りながら、しっかり谷側の手を雪面に近づけていくように、やってみます」と話し、ヨタヨタしながらみんなの前で実演してみた。

 2番目に上田さんが、これをまねっこしながら滑り降りてくる。「みんなにもコメントしてあげてね」と言われたが、恥ずかしくて何にも言えない。最後にまとめて、「できるだけオーバーに演技してあげてください」と言うのがやっとだった。

パワーポジションとは

パワーポジションの練習中

◆「パワーポジションとは?」
  こうして、とにかく私の番は終わった。班員は20人近くいるから、再び私に回ってくることはあるまい。「しめしめ。技が出つくしてしまってからよりも、早いうちにやっといたほうがよかったかもしれないぞ」とせこく考えながら、ほっとしていた。   

 続けて、次から次へと上田さんに指される先生たちは、「外ストックをつく」「ダブルストックをつく」などのバリエーションを積極的に楽しげに披露していく。さすがだっ。なんとなく、みんなのムードもいい。上田さんのトークのせいもあるかもしれない。言葉たくみに、みんなのやる気を、明るくさりげなく、ひっぱり出していくのであった。さらにいろいろな課題のもと、「閉脚でエッジに乗る」など、10数個ものバリエーションが披露されていった。

 印象的だったのは、ご夫婦で参加されていた、そのだんな様(萩原さん)が披露してくれた「パワーポジションのつくり方」だ。へっぽこ指導員の私は思わず、「パワーポジションとは、何ですか?」と質問。彼は、「いちばんパワーを出せるポジションです。コブの中でも、これがニュートラルポジションになります」と答えてくれた。ヘルメットをかぶった彼は、斜面に向かって構えてから、横にしたストックを腰にはさみ、ストックが落ちないように滑っていく。

 さっそく、とおみゲレンデの緩斜面で、みんなで腰にストックをはさみながら滑ってみた。なかなかおもしろい。下について、再び「このポジションだと、腰が前に出てこない気もするのですが……」と質問してみた。メットの彼は、「実は、最初は自分もそう思って、このバリエーションを教えてくれたデモに、同じ質問をしたのですが、『これでいい』とのことでした」と答えてくれた。ふうん。こうした質疑応答は、なんとも研修会っぽくっていい。上田さんもにこにこだ。


研修会が終わってからも練習を

残業で指導中の福岡専門委員

◆「月明かりの中での残業」
  研修会が終わってから、同じクラブの友人と、リフトが終わるまでいいもりゲレンデで滑っていた。もちろん、ストックはさんで、パワーポジションを作る練習も復習してみた。ここ数年スキーから離れていた彼女も、ストックをおっことさないで滑っていく。なんとなく、カービングの滑りっぽい。

 日がとっぷり暮れていく。私と彼女はさっそくデジカメを取り出して、ゲレンデでの記念撮影にこうじ始めた。ふと見ると、同じゲレンデの向こうでは、福岡昭充専門委員が、村山政幸専門委員や佐藤長生専門委員を交えて、月明かりをたよりに、おそらくクラブの人たちにいっしょうけんめいスキーを教えている。偉いなあ。そうこうするうちに、パトロールの人たちがゲレンデに残っている人々を追い立てにやってきた。私たちも、福岡さんご一行も、パタパタとゲレンデを追われていく。そうしながらも、「来年は、もうちよっと有益なバリエーションを披露したいもんだなあ」と思っていた。

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