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競技本部 指導者アップデートセミナー

平成15年10月26日(日)神奈川県立スポーツ会館

守谷紀幸 広報委員 レポート

写真:競技指導者アップデートセミナー
アップデートセミナー開始、野地副会長

写真:競技指導者アップデートセミナー
菊地富士夫競技本部長

写真:競技指導者アップデートセミナー
橋本吉登氏の講演

写真:競技指導者アップデートセミナー
橋本吉登氏の講演

◆ドーピングコントロールについて 横浜市スポーツ医科学センター 橋本吉登氏
 なぜ、ドーピングがいけないのかと問われれば、もちろんフェアプレーの精神に反するからとすぐに答えが返ってきます。そして、選手自身の健康を害するものだということも広く知られています。
 しかし、トップアスリートの世界になると、事はそう簡単ではないようです。
 5年後には、国体でも300検体まで増やすことが決まり、全競技がドーピングの対象となることになったのです。それは、国体出場を目指す選手そしてコーチの皆さんにとっては、もはや他人事ではない話しになってきているようです。

◆では、ドーピングコントロールの中身とは
 ドーピングは、検査の精度が上がったこともあるが、実際に行う選手も増えているという。
 ドーピングに使われる薬剤等は、蛋白同化剤(筋肉増強剤)、β−刺激剤(喘息の薬だが蛋白同化剤と同じ作用がある)、β−遮断剤(興奮を抑える薬で、射撃の選手などに使用例がある)、カフェイン(興奮剤)、メチルエフェドリン(風邪薬に使われる麻黄に含まれ咳止め効果がある興奮剤の一種)、ホルモン剤(副腎皮質ホルモンなどは疲れを感じにくくする)、エリスロポリチン(赤血球を増加させ、持久力が高まる。スキー選手などに使用例が多い)、血液ドーピング(競技前に血を抜いて人為的に血液を不足させて造血量を増加させ競技直前に輸血して赤血球を増やす)、利尿剤(体重制限のある種目で軽量前に体重減らす、他の薬剤の隠蔽剤としても使用される)などがある。このうち、カフェインは、コーヒー等の嗜好品や風邪薬に一般的に含まれているため尿に含まれている量(12mg/ml)で陽性とされる。コーヒー何杯でその量が出るかということは個人差があるので、試合前は飲まないほうがいいという指導をしている。カフェインの規制には、疑問な点もあり、WADA(世界アンチドーピング機構)でも規制物質から外すことを検討しているらしいので、今後の動向には注意が必要である。
 筋肉増強剤は、本来は特殊な病気の治療薬として開発されたものだが、競技のトレーニング時に使用し、本番には使用しないという傾向があり、最近はトレーニング中に検査を実施する競技外検査も行われるようになったという。まさに、いたちごっこである。
 規制物質の中にも、申告があれば使用できる薬物がある。これは、選手が疾病等の治療でどうしても使用しなければならないと判断されるものや量的に少なければ、ドーピングの効果のないものなどである。

◆橋本氏は、長野オリンピックで、メディカル・オフィサーを勤めた
 スケートの清水宏康選手が優勝直後、検査をしようとしたらNHKの取材陣から苦情を言われたが、この検査が終わって初めて金メダルなのだと言い返してやりましたと言っていました。この仕事に対する強い自負が感じられる一言で、とても印象に残っています。また、清水選手などトップの選手はドーピング検査は慣れたもので、同選手の物怖じしない態度には強い精神力を感じたという話も、トップアスリートの凄みを垣間見させられる気がしました。
 最後に、ドーピングは、まず啓蒙活動や教育を通じて違反者を出さない環境作りが重要である。不正をする者がいなければ必要のない行為だが、競技選手としては厄介なものには違いないが、やっていなければ正々堂々と検査を受けてほしいとのことであった。

写真:競技指導者アップデートセミナー
近藤欽司氏の講演

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近藤欽司氏の講演

◆コーチと選手の関係 元卓球全日本女子監督 近藤欽司氏
 12年間卓球の全日本女子監督を務めてきて、6回の世界選手権を経験したが、最も思い出に残っているのは、2001年の第46回世界選手権大阪大会です。
 この大会のルーマニア戦では、選手も特別メニューを作ったが、応援団も奈良大学の先生に依頼して6人の専門家の派遣を受け、応援団のため息を選手に聞かせないように意識したり、選手が元気付くタイミングで声をかけたりと工夫を凝らしたのでした。
 監督としては、1試合に1回取れるタイムアウトのタイミングを考えました。結局、1対1の決勝戦では、リードされた3セット目の3−7で取ったのですが、その時に「良かったときのことを思い出せ。安全に行くと相手に有利になるだけだ。攻めていく気持ちで、長いサーブを使ってみなさい」と声をかけたが、その甲斐あってか、攻勢に転じて逆転し、21−13で勝利し、18年ぶりのメダル獲得となりました。

◆卓球は、よく練習する真面目な人ほど試合で力を出せない
  コンディショニングでは、特に国際大会では時差に気をつけ、また、日本人選手は他国の人となじめない傾向にあるので、極力他国の選手や人と交わることを心がけ、練習は必ず他国の選手と行い、レセプションでも日本以外に国の人たちの中へ入っていくようにさせました。そうしたことにより、国外でも平常心で試合をすることができるようになったと思っています。
 中国がなぜ強いかということをよく聞かれますが、10年計画でその選手がどのくらい伸びるかを見ており、国内の競争も激しく、国際大会の成績如何で収入が劇的に増減するしくみがあります。世界選で18年ぶりのメダルを取って、卓球協会からの賞金がたったの10数万円の日本とは、環境が全く違っています。中国では金メダルで3年間、銀メダルで2年間、銅メダルで1年間生活できるだけの賞金が出るのですからね。

◆今年連盟を降りて、人材発掘に力を尽くしていく考え
  ところで、どういう人が素質があるのかということですが、球を打ったときの感覚の差を何種類持てるかということも重要なポイントで、私たちは選手に7種類の打球感を要求しています。また、技の中で何か光るものを持っている選手ということが大切です。相手のネットインした球を反射的にカバーするような、予測に反するプレーができる選手などが伸びる選手と言えます。また、試合の後半、プレッシャーがかかる状況の中で十分な技が使え、強気にいけるかも大切な能力です。国際大会では、ラケットを持ち替えて左右どちらでも打ってくる選手などがいますので、対応力が求められます。17歳で全日本チャンピオンになった佐藤リカ選手は、先天的にこれらの能力を持っていたのではないかと思います。さらに彼女は、物まねがうまく、上手な選手、強い選手のいいところをすぐに真似てしまいました。そういうことも大事な能力だと思っています。

◆コーチの言葉の使い方も大事な問題
 誉めるときは大きな声で、周りの人にも聞こえるように、しかる時は小さな声でというのが基本だと思います。練習中に光るところを見つけたときは、その場で声をかけ、本人に覚えさせることをしてきました。そのためには、ビデオでチェックさせることもいいと思います。私のいる白鵬女子高等学校では、インターハイ前に選手1人に他流試合100試合をこなすことを義務付けています。これが、本番で初対面の選手とやるときの力になっています。同校では全寮制の寮生活でいろいろ感じることが後の人生でも大切な糧になっていくと思っています。スポーツだけではなく人間として立派な存在となることを選手に求めていくことがコーチとしてあるべき姿なのではないかと考えています。

◆家庭の理解が必要だと痛感
 コーチとして私がやってこられたのも家庭の理解が必要であったと痛感しています。最近定年で家にいることが多くなったら、家にいないのが実はよかったのかなと思うこともありますが…。(笑い)あとは、メモすることが好きで、何でもその場でメモしないと気が済まない質でした。
 2度の大病を乗り越えましたが、特に2度目の心筋梗塞は大坂の世界選の3ヶ月前でしたから、本当に人生の転機となりました。この時に、手術に当たってくれた医師との出会いがなければ、こうして皆さんの前でしゃべっていることもなかったのかと思いますと、人との出会いが本当に大切なことだと思います。

写真:競技指導者アップデートセミナー
金子信太氏の講演

写真:競技指導者アップデートセミナー
金子信太氏の講演


◆近年のマテリアルの性能と、スキー技術について 株式会社ジャパーナ 金子信太郎
○スキー技術
 ターン始動時はスキーの真上から、先行動作時はテール荷重になると言われているが、これはあくまでビンディングの間での荷重の移動ということである。また、上下動と腰の向きが重要で、特に腰は常にフォールラインよりという意識が必要である。ポジションは、ビンディングの前後幅より出ることのないよう注意が必要である。
 ジュニアに多い腰折れの姿勢のままで滑ることのないよう、ターンイン時に外腰の位置を前へ出す意識を持ち、骨盤を立てたポジションを取るようダブルストックを用いた上体のフォールラインキープも有効である。
○用具
 今年のトレンドは次のとおり
 スキー:ターン導入のしやすさ。キャップ構造はトーションが強く切れる感覚があり、サンドイッチ構造は構造上の歪みがないが幅は狭くなる
 ビンディング:板のフレックスを妨げない。取り付けビスの幅が狭くてすむターンテーブルタイプが見直されている。ルックネバダ、マーカー等
 プレート:バランスと相性。プレート一体型
 ブーツ:縦に堅すぎず、横に敏感なナロータイプ
 滑走面:さらなる滑走性。Vサーモ、サーモパック、NCマイクロチューン
○トレーニング
 ジュニア選手に対してのトレーニング
(雪上)
・タイムを意識したトレーニング
  完走率100%を目指す、競合選手とのタイム差意識
・滑走量を多く確保する
  セットの時間短縮、雪なし県としての工夫、トレーニング時間のチョイス
・滑走本数でなく消化旗門数でのトレーニング
(夏季)
・イメージトレーニング
  VTR、インラインスケート
・心肺能力
  インターバルトレーニング、登山、自転車
・ウェイトトレーニング
  学校、地域のトレーニングルーム
・身体バランス
  バランスボール
・柔軟性
  ストレッチ
※アスリートとしての自覚を持ってトレーニングに当たる
(指導者)
・選手としてのコミュニケーション
  食事もいっしょに摂る
・ベーシックな部分の理解と選手への伝達
・指導力と環境づくり
・選手へ試させることはコーチのアイディア次第
・コーチとしての目標設定を明確に

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越前谷事務局長より認定書授与

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