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五竜T行事 スキーパトロール養成講習会
 
平成18年1月13日(金)〜15日(日)
大井智子 広報委員

スキーパトロール養成講習会

早速、雪上救急法の実践練習

◆五竜行事T「アキヤボードでの実践!!/スキーパトロール養成講習会」

 初日、13日の金曜日。エスカルプラザでハンディキャップ委員の人たちとの昼ごはんを食べ終えたころ、去年の春に買ったばかりの携帯電話がピピピと鳴った。最近やっと、じょうずに取れるようになった。

 受話器の向こうは戸嶋洋治SAK専門委員。「アルプスゲレンデで、雪上救助法の実践を行う」とのお知らせだ。さっそくゴンドラに乗り込み、14時前にアルプスゲレンデに着いた。

 「アキヤボード」は、ゲレンデで負傷した人などを乗せて運ぶ、雪上の担架だ。ポールの中でアキヤボードをダイナミックに滑らせるパトロールの技に初めて触れたのは、3年前の五竜行事Tでだった。今回は、そのボードを使っての実践だ。今年のパトロール受検者は2人だが、体験者やサポートを含め全部で13人集まっている。まずは心配蘇生法だ。もっとも若い男性が傷病人に選ばれて、雪の上に寝転んで、心臓マッサージと器具を介しての人工呼吸を受ける。


転倒〜パトロールが到着

アキヤが到着するから我慢してね〜

◆「4つの損傷」

 たいへんなのは、ここからだった。彼がゲレンデ滑走中に転倒し「けいつい損傷」「せきつい損傷」「大腿部骨折」「手首の損傷」をこうむった、という設定で雪上救助法の実践が始まった。

 まずは彼が滑っていき、稼働していないリフト下の雪深そうな斜面で、ばふんと転ぶ。続けて、今年パトロールを受検する男性が助けに滑り下りて行く。背中には、白十字マークが入り、英語で「パトロール」と書かれた赤いバックを背負っている。

 救助者は、無線で助けを求めてから、自分の板をばってんに斜面に突き刺し、彼の板も脱がせてばってんマークを作った。ここからは、あまりに展開が早くて写真を撮るのがせいいっぱい。一般スキーヤーを演じる人が救助に加わり、「どこかほかに痛いところはありますかー」「アキヤが到着するから我慢してね〜」と二人で呼びかけ続けた。


受検生が救助の指揮をとる

アキヤボードは、すいすい斜面を

◆「つめたっ」

 その間、せっせと二人の手も動いている。バッグから「けいついカラー」なる器具を出してむち打ち症の患者のように彼の首を固定し、せきつい固定器具の「バックボード」を背中に回してベルトで体を固定した。いつの間にか、アキヤボードも到着して待機している。救助の指揮をとる受検生が、集まった人たちに「周りの人の整理をお願いします」と呼びかける。

 たいへんなのは、演技者だ。若いとはいえ、何分間も雪の上でじっとしているのはさぞかし冷たかろう。彼は手首もケガしている。バックから出された、たぶん保冷シップがぴたっと手首に巻かれたときは、意識がなかったはずの彼から、さすがに「つめたっ」と声が漏れた。

 その手首に三角巾が巻かれ、骨折している大腿骨にダンボールの副子が当てられ、応急手当が完了した。おわんで味噌汁の具をすくうように、下に置いたアキヤボードで「せえのっ」とみんなで彼の体をボードにすくった。なるほど。こうすれば、乗せやすい。ケガ人発見からボードに乗せるまで、5〜10分ぐらいだったろうか。彼を固定したアキヤボードは、すいすい斜面を滑り降りていった。


お疲れ様です

専門委員も準備に大変です

◆「ばってんにしたスキーのエッジは斜面下側に」

 到着したボードの中で、演技を終えた青年は、冬眠中の生き物のようにしばらくじいっと動かない。冷たくて凍ってしまったのかもしれない。早く溶けて……と思って見ていると、少しずつ動き始めた。ほんとにおつかれさまでした。

 それにしても救助者を演じたゼッケン5番の男性は、とても受検生とは思えない見事な手当てと指示っぷりだった。さっそくリフトで感想を聞くと、資格取得はまだだが、スキー場パトロールの現役の人だった。やはり。

 彼は「傷病者の元で、指示する人は1人、動く人は2人がいいですね。まず初期手当てと場所の確保を行い、スキーをばってんにする。このとき、ビィンディングを斜面の上側にしないことが大事です。エッジが上側にあると凶器になって危険ですから。さらに、自分は傷病者の下側にいて、斜面の上側を常に見ていることも大事です」と言う。なるほど!スキーのばってんの向きなら、すぐにでも実践できそうだ。

◆「スキーだけじゃなくても役に立つ」

 パトロールの資格を取得して6年という30代の男性は、「ボランティアパトロールとしてスキー場に入っています。普段は、ゲレンデでネットを張ったり、巡回してお客さんに注意を呼びかけたり。パトロールで学んだ知識は、スキー場だけでなく、雪道で転んだり、家で手を切ったりしたときも、どうすればいいか役立ちます」と話す。

 せっかく山に来たら、まず自分が滑りたいと思うものだが、雪上救助法の実践は、そのプロの技を見るだけで感動する。指導員としては、知っておくべきことでもある。一般参加者に希望者をつのり、ぜひ見学するといいのでは、と痛感した。

 「では、ありがとうございました」とその場を立ち去ろうとする私に、戸嶋さんは、「初期手当てで何ができるか。骨折したとき何ができるか。意識がなく、パトロールが来るまで何ができるか。心臓止まって3分以内に何ができるか。そうしたことを知っておくのは大事だ」と最後に教えてくれた。


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