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競技本部セミナー1 スポーツ医事
 
総務本部・広報委員  守屋 匡裕

冒頭に片専務理事のあいさつ

真剣に聞き入るセミナー参加者の皆さん

◆競技本部セミナーTが開催される

 去る7月10日(日)神奈川県社会福祉会館にて、SAK主催の競技本部セミナーが開催された。
  本セミナーの目的は“スキー選手の健康管理と傷害に対する不安を解消し、安心して練習や競技会に参加できるように、指導者・選手・保護者を対象としたスポーツ医事相談事業の実施により、選手のコンディショニングに役立てる”ことで、参加された方は39名。
  参加者はジュニア指定選手及びそのご父兄や国体出場者、SAK専門委員と顔ぶれは多彩である。
  司会進行のSAK斎藤理事より、本日の講習会日程の説明、受講に際しての注意事項の説明、配布資料の確認が行なわれた後、主催者の挨拶が行なわれ、セミナーは始まった。

 講師は3人。それぞれのテーマに沿ってセミナーが行われ、どれもが興味深く、私の目からウロコ?状態で進行していきました。

◆片忠夫専務理事の挨拶

 皆さんおはようございます。暑いなかを競技本部セミナーにお集りいただき感謝申し上げます。
  SAKも間もなく70周年を迎える歴史を持つなかで、スキーを何人もの方が愛して、それを人生のなかに取り入れて過ごしてきました。皆さん方も今日は、人生のなかにスキーの楽しみを取り入れるために学んでいただければと考えております。スキー用具・マテリアルが一変してスキーに対する考え方がかわり、スキー技術が進化してまいりました。スキー界が低迷していると言われているが、競技人口だけは維持しております。競技指向が非常に強くなっているといわれますが、この会場には国体へ出場される選手もいらっしゃるので、是非とも目標を高いところに設定していただき、励んでいただければと思います。


体育協会 田辺さん

菊池競技本部長

◆ 県体育協会 田辺様の挨拶

 私は国体競技への派遣を担当しており、昨年も岩手県安比へ一緒に行きました。SAKは、ここ10年程入賞者を出しており、雪無県としては大変健闘していただいております。今日は優れた練習とメソッド以外にスポーツ分野で医科学をいかに取り入れることが大事かという事に気付いてほしい。練習がスランプに陥った時、中々伸びない時に別の側面から皆さんを助けてくれると思います。今、強くなくても続けていれば必ず強くなる時がきますので、正しいスポーツの向上を目指して意味ある講習会にしてほしいと思います。

◆菊池競技本部長の挨拶

 私も20年ほどジュニアの指導と強化に携わってきたが、ここにきて選手が強くなるのは技術的なことだけでなく、栄養学そして自分のどうしたら傷害をなくして予防し安心して競技に取り組めるか、医科学の面からも認識を高めておかなければいけないのではないかと痛感しております。特に合宿を通じて子供達の偏食、食事の量は子供達に限らず目についております。今日の講習内容を理解した上で、栄養学は家庭で子供に何を食べさせたら良いのか、役に立てていただければと思います。今日はバランスよく食べ、傷害に強くなろうという事を目標にうたっておりますので、有効な1日にしていただきたいと思います。


大塚薬品 金安講師

中学生の方々に参加いただきました

◆「疲労回復について」  講師:大塚製薬(株)金安係長殿

 私も中・高校生のときに部活動をやっており、その時は『まだ水をのむな、根性で負けるな!』の時代だったので、サプリメントとか食事については何も知識がないのです。今は運動する時に何を取れば良いのか、必ず水分を取るように教えがあるのだが、そのような知識を持っていれば、今よりも競技能力が伸びて良い成績が残せたのではないかと思っています。今日はそのようなことを踏まえながら疲労回復ということについて、お話をいたします。

 試合に勝つためには練習・栄養・休養をバランスよくとることが重要であり、特に栄養と休養についての講義が印象的でした。それまで練習はしても栄養、休養についてはそれほど考えていなかったこともあり、休養についてもただ休んでいるだけ、栄養にいたっては気をつけようと思っているくらいで特に何もしていないことを痛感しました。

 現在は多くの人が動物性たんぱく質(肉等・)塩分を多く取り、繊維質・ビタミン・ミネラルが少ない傾向にあり、それを補うために市販のサプリメントを摂取している状況だそうです。原則は1日3回の食事で必要な栄養を取り、不足しがちな分をサプリメントで補うようにするのが効果的だそうです。基本はバランスのとれた食事をとることであり、5大栄養素が大切であります。

【栄養】 消化 → 吸収 → 代謝 (エネルギー)

  • 代謝のサポートとしてビタミン・ミネラルを摂取する。
  • とらないと脂肪となってしまう

<朝食をとらないと脳に栄養がいかない>

朝食 (例) 

・主 食 ・・・米
・汁 物 ・・・みそ汁
・主 菜 ・・・めざし等
・副 菜 ・・・ほうれん草・納豆等
・デザート・・・オレンジ等

昼食 (例)

・弁当(コンビニ弁当等)+ ヨーグルト、バナナ、オレンジジュース等

夕食 (例)

・主 食 ・・・米
・汁 物 ・・・みそ汁(スープ)
・主 菜 ・・・とりの照り焼き等
・副 菜 ・・・ほうれん草・納豆等
・デザート・・・オレンジ等

 また講義中、最近話題の「BCAA」(分岐鎖アミノ酸)についての話もありました。
(BCAA:Branched Chain Amino Acid)

 協賛企業である大塚製薬さんから参加者に配られた「アミノバリュー」に含まれる「BCAA」は20種類あるアミノ酸の中で、体内で合成できない必須アミノ酸(9種類)のうちロイシン・バリン・イソロイシンのことで、主に運動時、筋肉でエネルギー源となる大切なアミノ酸とのことです。

(たんぱく質・アミノ酸が不足すると疲れやすくなる、筋肉が萎えるといった症状が現れる)


東海大学医科学研究所 中村講師

参加者

◆ 「スキー選手の外科系疾患の予防と対策」  講師:中村 豊氏

 2番目の講義は東海大学スポーツ医科学研究所の中村講師による「スキー選手の外科系疾患の予防と対策」です。中村講師は専門分野が関節障害、また(財)神奈川県体育協会スポーツ医科学委員会委員長ということもあり、スキーの現場における事故等の事例を交えての説明がありました。以下、内容について抜粋します。

症例などから診断する。

衝突などによる脳震盪(サインを見落とさない) 

・意識喪失または失見当識(ボーっとしている)
・健忘(2通り@事故の前の事を忘れているA事故の後の事を忘れている)
・眩暈(めまい)
・平衡感覚の喪失など

   (資料No9 脳震盪、 資料No10 脳震盪の重傷度決定のガイドライン 準備中)

*本人が言っていることは当てにならない→本人が大丈夫だと言ってもダメ

(第3者の客観的な判断が重要)

*会場等の付近で専門の病院(精密検査のできる病院)の把握も重要となる。
*二次的衝撃症候群の危険性(1度ぶつかって復帰してから2回目の衝突により死亡する)

→1度の頭部傷害の症状が完全に消失しないうちに2度目の頭部外傷を受けて発症する。

・脳の破壊的な腫脹の急速な進行を伴い、脳幹に直接圧迫を加える
・脳震盪の関連症状が消失するには、数日あるいは数週間かかることがある。

頭部外傷の注意点         

  • 意識障害を見落とさない。
  • 頭を打っていないからといって安心は禁物。
  • 意識の観察がキーポイント。
  • 見かけは意識清明であっても安心できない。
  • 医療機関へのタイミングを逸するな。
  • 医療機関の選定は事前の準備項目。
  • 搬送には十分な注意を払う。→首の骨が折れているかもしれないので急に動かさない。
    • 声をかける A少しゆする Bつねってみる
  • 体調がすぐれないものは復帰させない
  • 競技への復帰は慎重に。→ 現場での判断

10.頭部外傷の多い競技は事前のメディカルチェック。

*頭を打っている時はくびにもダメージがあるので注意すること。

   (資料No11 二次的衝撃症候群、 資料No14 脊椎損傷 準備中)

脊髄損傷     

  • 電気が走ったような痛み又は麻痺で感覚がない。→時間がたつと体がつっぱる。
  • 複数人数で負荷をかけないように移動(通常は動かせない)

膝のスキー外傷  捻挫・・・ひねること(靭帯切断も含まれる)

靭帯損傷 @内側側副靱帯損傷
       A前十字靭帯損傷   *昔にくらべてだいぶ治るようになってきた。
       B半月板損傷     

ひざ関節血症 膝がはれたかどうか確認(血液または関節液)→水がたまる

液を抜くことで圧迫を開放する(激痛)

→@MRI検査を受ける
  A関節鏡(内視鏡)検査

 しっかりとした診断を受ける。→ 苦痛の除去(セカンドピニオンの必要性有り)

    資料No42 前十字靭帯の受傷肢位、 資料No62 半月版損傷

 競技中ひざが痛くなった場合、内容に応じて(無理はしない)サポーター、テーピングを使用する。(テーピングについてはきちんと処置のできる人にお願いする)

スポーツ外傷の予防と対策

  • 傷害の把握
  • 技術の向上
  • 体力強化
  • 適切な運動計画
  • マナーの向上
  • 用具の改良
  • 安全基準の更新

スポーツ医科学センターの小野田講師

受講中の皆さん

◆ 「食べなきゃ勝てない!バランスよく食べ、強くなろう」  講師:小野田 愛

 最後は横浜市スポーツ医科学センターの小野田愛講師による「食べなきゃ勝てない!バランスよく食べ、強くなろう」です。専門分野が「スポーツ栄養」、トップアスリートの栄養指導に携わってこられた方で、食べることもトレーニングの一環として捕らえるとのことです。食事の基本である「5つの皿」と「水分」についての話では@穀物又は芋A野菜、きのこ、海藻Bたんぱく質、卵、肉、魚C乳製品、ヨーグルト、牛乳、チーズD果物、ゼリー、ジュース(果汁100%)、+「水分」の食品を毎食の食事ごとにしっかり取ることをベースに練習時間に合った時間帯(合宿や試合の時)に食べることでより効率的な運動エネルギーを取りこみ疲労回復にも役立つのだそうです。

 実際に試合や練習終了後の食事のタイミングが大事という話を伺いました。練習前や試合前でのエネルギー補給(糖分や水分)、練習中、練習後にも適切な補給(食事)をすることをトレーニングしていくということです。

    (資料3枚目 独楽の絵    資料9枚目 5つのお皿と水分 準備中)

 この食べるトレーニングについては早い段階から体を作るといった目的でも重要になってくるそうです。ジュニアの選手が食事の代わりにお菓子ばかり食べて食事を取らないことの弊害(成長のバランス)についても良いことはなく、一流の選手ほど食べるということに対して好き嫌いもなく上手く取り組んでいるということで、ジュニアの選手を始めとして今回の内容について活用して欲しいとの事でした。

    (資料6枚目 食事のタイミング  資料12枚目 試合前の食事について 準備中)


◆取材しての感想

 参加したジュニアの選手達も真剣に聞いていましたが、それ以上に父兄(母親)の方々は、講演が終わった後に、自分の子供の食事についての相談をしていました。

 これは、選手本人が理解し取り組むことも大事ですが、家庭内においても応援していただければ、必ずやスキー技術のレベルアップにつながるのではと思います。


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