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第20回障がいをもつ方のためのスキー教室

2012年3月24日(土)〜25日(日) 長野県 車山高原スキー場
ハンディキャップ委員  水附 謙太郎


私がハンデキャップ委員となって今年で8シーズンとなり、今回初めて視覚障がいの方を担当した。一昨年の秋に横浜にて開催されたハンデキャップセミナーTにおいて、NPO法人プレジャーサポート協会の馬場理事長から、視覚障がい者の擬似体験とそのサポート方法を学んだ。そして、翌年1月に五竜スキー場にて開催された講習において、受講者同士ペアでのサポート練習や、アイマスク着用での滑走などを体験した。これら学んだことを今回のサポートに生かしたいと考えた。
 今回サポートするOさんは、61歳男性、右目は全く見えず、左目はぼんやり見える程度で、雪上にストックで描いたS字を認識することが出来ない。しかし、スキー暦は20年を超え、特にここ5シーズンはスキーに精力的に取り組んでおられ、滑走日数は近年で最も多い20日である。今年1月の五竜行事で見事3級に合格し、今回2級合格を目指してスキー教室に参加された。

【1日目、午前】
 まずOさんと、今回のスキー教室での要望事項やサポートの注意点を話し合い、練習方法をすり合わせた。サポートには、Oさんから持参の誘導用スピーカーを使うよう要望を受けた。スピーカーはデジタルカメラ程度の大きさで、本体を首から提げて首部にマイクをはさむタイプであり、拡声器のように声量を増幅してOさんにより明瞭に伝えることができた。はじめはOさんの技術の確認と足慣らしのため、緩斜面を自由に滑ることとし、滑走中は常に2mほど後方を位置取り、周囲の状況などをOさんに伝えてサポートすることとした。

 リフトの乗降の際は、Oさんの左横(リフトの支柱が左に、リフト係が右にいるため)に並び立ち、乗車位置までの距離がわかるよう「乗車位置は約2m先です」と声をかけながら誘導し、乗車のタイミングではストックが巻き込まれないよう「ストックを挙げて」、と都度声がけをした。リフト上でも、「ゲレンデは広く真ん中辺はすいています」「リフト下の右横で幅6mぐらいのうねったコースを 、小学生が歓声を上げながら滑っています」とゲレンデの広さや他のスキーヤーの状況を伝えた。降車位置に近づくと、降車のタイミングをはっきりと伝えるため、降車位置までの距離のカウントダウン、降車後の行動を「そのまま真っ直ぐ行ってそこから右へ90度まがり、そこで止まってスキーを左90度廻してしてください」と、細かく言葉で伝えながら、常に左隣に位置しながら誘導した。
 滑り始めにあたり、まず「この立っている位置は平坦ですが1m先から緩い右下がりの勾配となっています」「斜滑降でスタートし安全な所に行ったら右ターンと合図しますので対応してください」「私は後ろに廻り誘導します」と現在の位置とゲレンデの状況を言葉で伝え、スタートした。滑走中も「右ターン、左ターン、そのまま斜滑降」「スピード落として」「OK良いよ」と常に具体的な言葉をかけて誘導した。過去4回の指導記録から想像したよりもOさんの技術は高く、健常人と同じくらいのスピードで滑走され、実際に併走してみると、眼が見えるのではないか、と錯覚するほどの滑りであった。

【1日目、午後】
 午後は中斜面の2級検定バーンで練習した。中斜面の滑り出しは若干急なので、斜面に慣れるため横滑りでスタートした。Oさんにとって横滑りの練習は初めてであったため、私はバックボーゲンでOさんの前に位置して誘導し、緩斜面になったところでOさんの後方に移動した。ターンの切り替えの時に長い横滑りや斜滑降を入れて、大・中・小のターンを後ろから指示して、何回も滑った。
緩斜面でも気になっていたが、Oさんはストックを突く時や、抜重する時、腰の屈伸が出るクセがある。また、斜面が少し急になるとプルークになってしまう。このようなポイントを解消する必要があると本人に伝えたところ、夕方本人から「今回の2級受験は見送り、明日も練習をしたい」との申し出があったため、2日目は指摘ポイントの改善のための練習に当てることとした。

【2日目(最終日)午前】
 1日目の夜に雪が降り、ゲレンデコンディションが良くなった。2日目の午前で講習は終了となるため、バッジテストを受験する班と1日目同様講習を受ける班に別れた。
前日に指摘したポイントを克服するメニューとして、緩斜面で腰を伸ばし姿勢を良くして滑り、ターンとターンの繋ぎ目には板をフラットにする練習を行なった。姿勢の矯正はストックの手皮を外し、ストックの両端をにぎり、それをお尻に当てて滑る。視覚障がいのあるOさんに、板をフラットにする位置の説明は工夫を要した。健常者なら雪面にストックでS字を書き、切り替えの時期をストックで示せるのだが、彼には通じない。そこで2つ縦に並んだ時計をイメージしてもらい、上の時計の6時が下の時計の12時と重 なるよう上下に並べ、Sの字を12時、11時、10時、… 7時、6時(12時)、1時、2時、3時、… 6時としてイメージを共有した。10分間の休憩を挟んで2時間練習を行った結果、終了時には前日に指摘したポイントはほぼ改善された。


 今回の講習では、前述の通り視覚障がいの方にターンイメージを伝える方法として、楕円形の時計のイメージを用いた。8時・7時・6時(ニュートラルポジション)1時・2時の位置における身体の動きが少しでも理解してもらえたと感じている。また、滑走中にボーダーが突然横から進入してきたり、前を滑っているスキーヤーが転倒または方向転換してクロスするようなニアミスがあった。誘導者は、常に前後左右の状況変化に注意を払い、普段よりも早めに状況を判断することが必要であると改めて実感した。今回はマイクを胸に提げていたのでOさんの滑りを見ながら誘導できたが、2級検定では誘導者はセンターを示すために、斜面をまっすぐ下降して腰に付けたスピーカーで誘導する必要がある。対象者に合わせて誘導方法を選択して適切にサポート方法できるよう、今後は様々な誘導方法を経験してみたいと実感した。



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