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平成14年度 指導員養成講習会理論2
平成13年11月11日(日)神奈川県民センター

菊地競技本部長  

【1】競技スキーと基礎スキーの違い

◆始めに競技スキーと基礎スキーの違いについて若干触れてみたいと思います。この比較はどちらかを否定するという訳ではありません。ここに2冊の本があります。1冊は、基礎スキー教程です。中を見ると、テクニックの写真、ポジション、スキー操作など詳細に記述され、まさに教程であり、指導マニュアルであります。競技の世界にはこの1冊(ルールブック)があります。SAJ競技規則といいますが、他にも何冊かありますが、すべてルールブックで、写真も1枚もなく、競技の世界には指導マニュアルはありません。基礎スキーのように統一された滑りというものはなく、全てがルールによって管理され、その中で選手はどんなスタイルでもあっても速ければよいのです。

◆したがって、教程はないので、コーチは自分のメソッドで指導できます。そしてコーチとして評価されるのは、選手を強くすることです。そして競技スキーのテクニックは、マテリアル、ポールなどの進歩とともに進化しつうあります。世界の頂点に立つ選手のテクニックが世界最速のテクニックとして脚光を浴びるのです。皆さんご存知のトンバですが、そのテクニックは、誰にもマネできません。なぜなら、神から授かったセンス、そして天才が更に努力して、彼のテクニックが完成されたからです。したがって、誰も真似のすることの出来ない、彼独自のテクニックなのです。

◆言い換えれば、基礎スキーは、どちらかと言えばテクニックが統一されていますが、競技スキーは個性です。ちなみに、私はジュニアの指導で、個性、特にその選手の長所を伸ばします。どの選手にも誰にも持っていない個性があり、欠点を修正するのに時間をかけるのはもったいないと思いますし、長所を伸ばすことで欠点が修正されることもあります。

◆それでは、どういう人がコーチになれるか、誰でもなれます。資格もありません。一方基礎スキー界には、資格制度が存在します。みなさんがこれから受けようとしている準指導員、そして指導員と資格を取得するまでに、理論研修会、雪上における研修会、そして検定と、指導者としても[十分な知識を身に付け、初めて指導者として、競技でいうコーチになれるのだと思います。ちなみに、競技の世界煮にある資格は、全て大会運営に係わる資格です。

◆基礎と競技を比較すると、指導員要綱にしても、指導者の資格制度にしても、スキーヤーを育てる、楽しさを伝えるという色々な面で確立されている気がします。しかし、競技の世界も、目的を変えれば,基礎スキーより楽しめる気がします。そこには形に拘らず、チャレンジするという楽しみ、肌身で体感スピードを味合うことができるからです。是非、競技本部の主催する大会にチャレンジしていただきたいと思います。

【2】競技スキーのルール

◆次に競技スキーのルールについてお話ししたいと思います。先ほど話しましたが、全てといってよいくらい、ルールによって管理されています。しかし、いたずらに選手のパフォーマンスを制限したり、制裁を与えるものではなく、大会運営が公平で、公正に行なわれる為に、また選手の安全と、選手を全ての問題から保護する為に選手を含め、全ての役員の権利・任務・義務を与えています。

◆そのなかで選手の権利と義務、開催者の権利、任務義務について簡単に話したいと思います。選手の権利と義務のなかで特に大切なのは、選手もルールを熟知する義務がある。ルールを理解していないと、不利な状況になることもあります。また、選手は、全ての大会関係者・一般の人々に対して礼儀正しくかつスポーツマンらしく振舞わなければならないなどの義務として定めてあります。

◆主催者の権利と任務、義務については、その中で特に重要な役員であるジュリーメンバーの任命ですが、その前にジュリーメンバーとは、技術系種目では、TD、主審、競技委員長の3名で、スピード種目は副審が追加されます。しかし、選手サイドから見れば、TDが誰であれ、競技委員長が誰であれ、全くといって関係ないと思います。選手が成績を残すのに一番関係が深いのがセッターだと思います。

◆選手が大会において闘わなければならない要素が3つあります。自然環境との戦い、自分自身との戦い、そしてポールセット攻略と、選手が楽しくレースができるか、選手が成績が出せるかなど、レベル、地形に適したセットをしなければなりません。しかし、ただ適当にセットしているのではなく、セットそのものにルールがあり、種目によって旗門間の距離のミニマムとマックスが決まっており、旗門数も、標高差の何パーセントでなければならないと決まっています。

◆またスラロームでは、オープンゲート・ヘアピン・バーチカルフラッシュ・バーチカルの旗門がセットされています。この辺は大変重要ですので、各自で調べておく必要があると思います。オープンゲートの幅はインポールからインポール4mから8m(通常は6mでセット)、旗門環の距離(赤と青)は10m以上です。スキーの板、リフトの搬器の距離などを目安にします。

◆また皆さんもこれから指導していく過程で、必ずセットをする機会があると思います。そのときに、旗門間の距離、間隔を理解していれば、さまになったセットとなります。ルールを理解しないでセットをすると、リズムのないセットとなってしまい、生徒が楽しく滑れないどころか、上達の妨げとなる場合がありますので、ご注意願います。

◆競技スキーの知識として、ジュリーメンバーとポールセットの数値と旗門の名称は、最低知っておく必要があろうかと思います。


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