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◆松本SAJ専門委員 詳細内容


■ 松本SAJ専門委員「指導実技編の理解」

  全日本指導委員会に所属しています。8月に研修会のテーマを決めて、11月23日から車山で実技の研修があります。12月になって、研修会のテーマとして皆さんに伝えられるということになっています。全日本では8月頃から始まっています。

◆研修テーマは「指導体系と検定種目の理解」

 まず始めに、今回の研修会の実技のテーマですが、「指導体系と検定種目の理解」です。(1)指向別・対象別指導の内容と要点、(2)運動の質的内容と評価の観点 が実技の研修会のテーマになっています(オフィシャルブックP10参照)。まずは、スキーを取り巻く環境の変化についてお話ししたいと思います。昨今、ご存知の通り、経済不況とか言われていまして、スキーもひところのブームが去って、1994年ピーク時には2204万人、現在は1360万人のスキー人口だそうです。その差840万人ですが、これは、今後機会があればスキー参加をしたいという層で、これらの方が参加してくだされば、スキー業界も潤うと考えられます。実際にスキーに行く場合、例えば携帯電話を持っている方多いと思いますが、その使用料を支払うために、スキーに行く回数を皆さんが減らしたとしたら、スキー業界はかなりの打撃を受けるわけです。そのような話をしていると、スキー業界も暗い話ばかりですが、先ほどお話したように潜在需要者もかなりいるということで、そのような方の参加を皆さんも促していただければ、スキー業界もかなり潤うのではないかと思います。

◆つまり、スキーを教える、というのではなく、お手伝いをする

 スキーに参加する方が無関心であるという原因が、情報不足ということが大きな理由として挙げられます。スキーはもともとその特性から、レクリエーション指向のスキーはクラブ参加の形で組織層が増えてきたスポーツです。競技のようにチャンピオンシップを求める方と、技術を追求して、高い技能を修得した指導者と、2つに分岐したという経緯があります。皆さんの場合は技術を追求し…というところに当てはまると思いますが、現状を考えるとこういうスポーツは大衆化、多様化、大型化によって、参加形態が多様になってきています。健康指向、自然志向など、それ自体を目的とする参加者も増加しており、これらを踏まえてもスキー指導者としての役割は大変重要になってきています。今年度の研修会のテーマ設定にあたり、SAJのスキーを覚えたいというのではなく、自分にとってのスキーを指導してほしいと言う方が増えてきているというのも事実です。これまでのスキーは、自分が会得した技術を手がかりに教えてあげるというタイプの指導者が多かったのですが、これからの指導者は、さまざまな種類の要望に応えられるということがもとめられてきます。つまり、スキーを教える、というのではなく、お手伝いをする、という感じのタイプが望まれます。そのようなことも踏まえて、よき指導者になっていただきたいと思います。教程が分冊されて7冊とも言われていますが、でてくる用語等はすべて同じで、1つ1つの理論を組み立てていくと全部同じになるようになっています。自分なりに整理していただければよく分かるのではないかと思います。

◆スキーヤーにニーズにあわせた指導が

  スキーの指導法は、これまでマニュアル化されワンパターンでしたが、現在はそのような指導法では導けなくなくなってきています。ここのスキーヤーのニーズに合わせた指導、場面場面に合わせたもっとも効率の良い指導法を指導者自身が多様に持つということがよき指導員に求められています。その理由として、スキー場の変化があげられます。圧雪車がはいり、コースが整備され、ターンがしやすくなった。また、スキー用具の進歩があります。ブーツ、板、ビンディングの性能が良くなりました。こういったものの変化も指導環境を変化させる要因の一つになっています。第3はスキーヤーの指向の変化です。皆さんは指導員という資格をとってどうするの?という問いかけに対し、何と応えるでしょうか?資格を取得することによって、色々な人にふれ、教える喜びということもあります。皆さんには価値観の変化に対応しながら教える楽しさが自分の楽しさになるようにがんばってただきたいと思います。

◆指導員は基礎技術にたいしてどれくらい習熟しているかが大切

 昨年、指導員検定では第4会場の鷲が岳で検定員をしました。神奈川の方も40名ぐらい受けられましたが、合格率が高くて良かったと思います。見ていますと、皆さん急斜面に対してとても異常な意識をもっているようです。ところが、指導員といのは、プルーク3態にもありますように、基礎技術に対してどれくらい習熟しているかということがものすごく大事になってきます。そのように考えていただければ、プルークをしっかりやる必要性を理解していただけると思います。普段の練習でも急斜面やカービングだけの練習ではなく、ずらしや、スキー技術の基礎となっている荷重、回旋、角付を頭の中に最初にいれておいていただいて、いろんな技術を駆使していただきたいと思います。是非、指導員受検のかたは頭に入れておいてください。

◆指向別対象別もターンをすることが大前提

 よく指向別対象別ということで、今言われています。実際のスキーヤは滑ることで満足感を味わうのですが、直接的に滑ることだけではなく、付帯的な目的に価値観を見出す人もいますので、指導者は単一的な教え方をしないでいただきたい。それにはまず、はじめの段階でスキーヤーがどのような滑り方をしたいのか、どのような技術を活用したいのか、などの指向や体力特性などを正しく把握することが非常に大切になると思います。指向別対象別といっても、たとえばパラレルターンを滑りたいとかの目標に向かうことを指向別と言います。また、自分に適した滑り方を見つけたいということが対象別です。どちらもターンをすることです。ですから、ターンをするのに必要な原則的な条件を満たしたものを形というおおきな観点で捕らえます。それを技術を表現します。どちらもターンをすることが大前提ですので、お間違えのないよにしてください。

◆相手に会ったオリジナルのカリキュラムを組む

 技術ということになりますと、誰もが満たされなければいけない運動要素を持つことが必要になります。ターン技術の組み立てというところに入りますが、ターン技術の組立てが指導活動の目安、指標となり技術の体系化が検定種目の理解と実践に繋がって行くということになります。指導展開図を見ていただくと、安全、快適、挑戦という項目がまず書いてあります。安全=制動技術、挑戦=カービングと決め付けずに、相手に会ったオリジナルのカリキュラムを組んで指導して行きたいと思います。安全もかならず安全=制動とは限りません。その人は斜面に向かってもう少しスピードを出したいと思っているなどあります。とらわれないことです。マニュアルなどに沿って単一的に教えるということは、今は絶対にしてはいけません。ものすごく指導者に多いのは、膝を曲げてとか、手を前にとか前を見てとか、抽象的な言葉を使っているかと思います。膝を曲げるとはどのくらいが適切なのか、手を前と言えば思いっきり前に出す人もいるので、漠然とした言葉は使わないでいただきたいと思います。

 安全にスキーを楽しみたい、快適にスキーを楽しみたい、挑戦的なスキーをしたいというなかで、もっとも大事なことは、スピードコントロールです。このスピードコントロールを教える段階でのカリキュラムが重要になってきます。単純に人を並べて、はい斜滑降とか、ではなくて、皆さん自身が指導するときには指導案を作って、それにもとづいて具体的に進めて行くのが良いと思います。導入、展開、整理などの言葉がとても指導の中では大切です。その日の狙い、指導の場所、指導内容の要点、学習者の活動、準備すべき資料、指導上の留意点、評価の観点、こういった項目をすべて自分自身がノートに書いたりして指導の中ではっきりと把握していないと、ただ単に種目だけを教えることになってしまいます。これは、自分自身も狙いがしっかりしますし、相手に対しても、非常にわかりやすい指導になると思います。

 高齢者の方がスキーをはじめるとき、まず安全で確実なスキーを目指していることがわかると思います。そういう人達はスキーを通しての健康作りであったり、仲間作りだったり、自然を楽しむなどが、狙いになります。そういう人達に、スキーはうまくなれば良いと言って、カービングばかり滑らせても意味がありません。是非、指導案というものを是非作っていただきたいと思います。

 いろいろお話しましたが、スキー技術のコアにあるところは、荷重、回旋、角付、これを頭に入れていただければ、種目の理解がしっかりできると思います。そしてスピードをコントロールするにはエッジングとかポジションが大切です。みなさんシーズン頑張ってください。


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